パッドの話(4)
今回は発泡型の作成についてお話をして行こう。
まずは、木型マスターというものを作成する。
インプットは’パット図’という図面である。
設計部隊から出てくるものである。
ワディング厚やら潰れ見込みやらの要因はあるし「なんで造形形状に寸法を入れるの?」があるのだが、これは別の機会にお話しよう。
この図面を元に’硬質ウレタン’あるいは文字通り’木’で形状を作っていく。
硬質ウレタンは一個だけ型を作る場合用いられる。
加工が簡単だからである。
複数個、型を作る場合、木を用いる。
再利用が可能、だからだ。
この時も、ただ形状を作り上げるわけではない。
’樹脂’のところで話している’成形収縮’を加味していく。
それに、後で話すが’型収縮’というものも折り込むのである。
二重の収縮を折り込んだ物になるのである。
結構、大きくなる、図面より一回りは大きい。
業務の流れとしては、木型が完成すると’デザイン承認会’なるものがある。
デザイン部隊から「これで、型作ってもいいよー」と言ってもらうのだ。
しかしながら、デザイン部隊、一筋縄ではいかない。
確実に修正が入るのである。
それも、自分でシャカシャカと片一方だけを削り、クレイを貼り、後は「反対側も同じねー」である。
木型屋さんは大変である。右の形状を左に写さなければならない。
設計部隊も大騒ぎである。
’変更された部分’を図面に繁栄しなければならないからだ。
この部分に組長はいつも疑問を持っている。
意匠形状を設計者が、勝手に’寸法の入った図面’に置き換えている。
しかも、前出の潰れ見込みが入ったものであり、3次元方向に異なった収縮まで入っているのだ。
オリジナルと’全然違う物’ではないか?と思う。
(当時だけかと思っていたが、最近、某メーカーの開発から’今もまったく同じだよ’と言うことを聞いた!)
まあ、修正をし再度、デザイン承認を受け、見事完成した木型に対し’PL検討会’なるものが待っている。
型はご存知の通り’開かなければ’ならない。
製品を取り出さなければならないからだ。
クッションでは’上型’と’下型’
バックになると’上型’’下型’そして’中子’の3つになる(3枚型という)。
その’割り位置’を決めるのである。
通常の(他の)製品では設計段階にほとんど決まってしまう。
ところが、ウレタン成形では最終決定は、この段階で決まるのである。
(ある程度は設計段階でも決めているが・・・・・)
なぜなら、ウレタンにはアンダーでも、脱型が可能(変形するから)という理由なのである。
樹脂部品でもこの’無理抜き’がある場合もある。
が、ウレタンの場合、それこそ’限界が無い’に近い。
実際には、製品のピアス部分(貫通穴)、バリの立ち上げ方向、作業性、3枚型の場合、中子の抜け方など他の要因によって決定される。
この後、砂型に鋳込むのだが’木’の場合ひと行程、増えるのである。
製品のアンダーはOKなのだが、’木’の場合抜けなくなってしまうのだ。
(硬質ウレタンで一回しか使わないときは壊して取り出すのである)
木型屋さんはこの時点で’パズル’にする。
バラバラにし’パズル’で抜けるようにするのだ。
この後は、反転砂型をとり、再度反転をとって鋳物としていき(この時点でアルミの鋳物収縮が入る)発泡型の完成である。
つぎは’成形条件を出す’のである。
原料の投入量を調整する。
また、上型には’ベントホール’なる空気の逃げ穴を開ける。
この’位置’によって状態が変わる。
増し型をした時など’同じ型’なのに条件が異なる。
型を斜めにしたり、原料の撒き方を変えたり、配合までいじくることがある。
なんとか、均質な状態(右と左とか、前後でとか一個の状態での条件)まで持ってくると、次はパッド硬度の評価になる。
パッドの裏面冶具を作り、30cm位の円盤を押し当てて’撓み−加重’を測定する。
(アンドレに「やれっ!」っていわれたやつである)
まあ以上が、パッドの’生産’と言う部分での、組長の知っている事柄である。
質問があれば遠慮なく言ってきて欲しい。
知っている範囲でお話しするつもりである。
次回からは’パッドの設計’という部分を話していこう。
2004年8月9日