樹脂(4)
今回はブロー成形の’製品設計’について話していこう。
例の’ト×ッド・○ニー・ワゴン(カンボジア?)’のラッゲッジ部品についてである。
まずは部品部位の説明をしていこう。
ワゴンのバックドアを開けるとカーペットが敷いてある。
カーペットをはぐると、結果スペアタイヤがあるのだが、その回りにある小物入れなどのボックス、リッドなどど、スペアタイヤの上に’板’がある。
「この辺をブローでやろう」と言うことになった。
それまでの車種では’鉄板’で出来ており、凸凹道を走るとガタガタとうるさい。
数々の音対策を施したのだが、どうしようもなかったのである。
当初、ボックスの方が形状が複雑なので、難しいのかと思ったが順調に’試作、玉成’が進んでいった。
リッドについても、あまり問題点は出て来ない・・・、順調である。
問題は’パネル’(板)であった。
ただの’板っきれ’ということで新人に設計をさせた。
まあ、新人とは言っても設計部への所属2年目、の奴である。
与えられたエリアで寸法通り、設計はした。
「ビード形状とか、スタンプ形状、どうします???」にも
「おまえの思う形状でいいよ」と組長は何も考えずに当人に任せてしまったのである。
(チェックなどしなかった。組長はボックスの方で手がいっぱいだった)
試作品が出来上がり、実験の開始となった。
熱サイクル試験、冷間衝撃試験、順調であった。
が、静加重試験で大問題が発生した。
実験課から電話が入る「おい、○○、スルメだぞー!」プチッ。
当時、実験課は’荒くれ者の集まり’という、えぐい部署であったのだ(今も、どこでも、同じだとは思うが・・・・)。
新人は必ず「チェーンブロックで吊るされる」という試練のある部署だった。
組長が飛んでいくと、パネルの上にはウエイトが載っていて「ごめんなさーい。もちましぇーん」とスルメ状にそっくり返っていた。
新人設計君(K君)も走って来て、目を丸くしている。
実験課の担当も「なんじゃ、こりゃあ?」とカンカンである。
組長はK君に聞いた。
組「強度計算、した?」
K「自分の担当していたト◇ムでは、こんな意地悪試験って無かったんで、えいや!でやっちゃいました。」
組、実担「・・・・・・・・・・」
K「でもビード、かっこいいでしょ」
組「おまえなぁ。車の使用環境、考えてみろよ。おまえがこの手の車、買ったら荷物はどれだけ入れるーー?」
K「俺、この手、好きじゃないんで・・・」
組「じゃーーー無くてーー!!買う人のこと、考えろよーー」
とりあえず、強度計算を始めた。
当時はパソコンと言うものなど使えるはずが無い、手計算だ。
(研究部にはあるにはあったが「ばなな」とか言うと「ばななの絵」が表示されるという音声認識というものに使っていた)
まずは、複数ある形状の中から’弱断面’を探す。
ご存知の通り、撓み量は’曲げ方向’に対し中立位置から離れ量は3乗できいてくる。
K君の設計での弱断面は一発で見つかった。
パネルに「餅切りのガイド」みたいな’かっこいいビード’が数本、走っていた。
ためしに強度計算をしてみる。
ヤング率は・・、弾性係数は・・、電卓で出てきた数字にびっくりした。
「54◇△mm!なにーーぃ!全長1100mmで5メーター??」
じぇんじぇん無理であーる!!!
その日からは’断面’との格闘である。
結果は’与えられたレイアウト’では全然ダメということが分かった。
’無垢材’でも’混ぜ物をしてももたない、という答えが出てきたのである。
また、強度以外でも問題が出てきた。
’線膨張’により、PPだけだとパネルが落ちてしまうのである。
ということで’レインフォース’としてパイプをインサートすることになった。
インサート成形もトライアルをした(勉強出来た)が、当時の組長の技術では’無理’であった。
最終的には成形後’かち込む’方法が取られたがここでも問題が出てきた。
片方から’かち込み’熱サイクル試験にかけるとパイプが出てきてしまう。
実験担当にいやってほど怒られた。
両端に逃げの穴を開け、目隠しとしてエンドキャップを設定して何とか完成した。
市場にでての反響はというと「・・・・・・・・・・・」何も無かった!!!
この時、組長が勉強したことは「客先の要望を’丸受け’はせず(疑って)よーく確認をする」、「新人の実力は’良く見極める’時間を作る」の2つであった。
(今、実践できてはいないが・・・)
2004年8月21日